活動報告

「釧路ザリガニトークリレー」を開催しました

2011年11月13日

11月13日、釧路ザリガニトークリレーを釧路市立博物館さんとの共催で開催しました。釧路市は当会代表の川井唯史の出身地であり、ニホンザリガニ研究のルーツでもある場所。しかも最近は釧路湿原を含む広いエリアに外来種のウチダザリガニが入り込み、「ザリガニホットスポット」でもあります。「釧路ザリガニトークリレー」は、ザリガニをテーマとしてさまざまな角度から調査・研究している人たちが一堂に会して行われました。

釧路でもかつては身近な小川にたくさんいたニホンザリガニがずいぶんと減ってしまいました。それでも調査を進めてみると未だ残された生息地もあり、それらを大切に保全していかなければならないことが確認されました。一方でどんどん数が増えているウチダザリガニはニホンザリガニの生息を脅かすだけでなく、天然記念物である春採湖のヒブナにも悪影響を及ぼしています。ヒブナが産卵する水草を食べてしまい、ある種の水草はほぼ絶滅してしまったのです。

ウチダザリガニの防除に取り組む方々からはいくら捕っても数が減らず、根絶は難しいとの声が出されました。小さな個体がかごでは捕り切れないことと、繁殖力の強さが原因です。しかし、春採湖では捕獲圧を高めることで水草の繁茂が回復したエリアもあるとのこと。人工の水草を入れて産卵場所を作ったり、人工繁殖も併せて進められています。今後も捕獲の方法を検討しながら防除を続ける必要性と、今以上のウチダザリガニの拡散を防ぐために市民への啓発が大切だと確認されました。

たくさんの市民の方々から質問があり、質疑応答も盛り上がりました。「おいしいのだから、特産品にできないか」という提案もありましたが、「おいしいという価値が一人歩きしてしまうと、さらなる放流につながる可能性がある」との懸念もあります。かと言って大量の生き物を無駄に殺してしまうのは心が痛い…。だけど放置したら在来の生態系がどんどん壊れていく…。外来生物の難しさは生き物の問題だけでなく、人の心の問題も大きく関わっているからだと私は感じています。だからこそ、いろいろな考えを持った多くの方々にこの問題を一緒に考えていただきたいと思います。

今回のシンポジウムを機会として、今後も釧路市立博物館さんとの連携を深め、情報発信をしていきたいと思います。来年度はウチダザリガニ防除体験会などもぜひ開催したいと計画しています。釧路の皆さま、どうもありがとうございました。そして、これからもよろしくお願いいたします。

(事務局 野谷 悦子)

演題

1 北海道、そして釧路におけるザリガニの活動の意義
川井 唯史(ザリガニと身近な水辺を考える会・代表)

2 北海道におけるニホンザリガニの分布と生息を把握する調査方法
山田 浩行(応用生態工学会札幌 ザリガニ研究会)

3 釧路湖陵高校生物部のザリガニ研究について
梅本 美由紀(釧路湖稜高校)

4 釧路工業高校理科部活動報告―釧路市春採湖岸「トンボの池」における駆除によるウチダザリガニ個体数の変化
一條 信明(釧路工業高校)

5 春採湖におけるウチダザリガニ駆除の取組み
照井 滋晴(NPO法人環境把握推進ネットワーク-PEG)

6 春採湖におけるヒブナの産卵環境の悪化
針生 勤(釧路市立博物館)

1
  • Clip to Evernote