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全道ザリガニサミット in 円山動物園
今日は然別湖のトンボと外来種というテーマでお話します。然別湖には外来生物のウチダザリガニが生息しています。元々この湖にはいなかった生き物ですが、今、猛烈な勢いで増えています。ホテルの前から放たれて、現在は湖岸にかなり広範囲で広がっています。
私はトンボの研究をしているのですが、近年然別湖では貴重なトンボが減っていると実感してしいます。そして、ウチダザリガニがものすごく増えたことがトンボの生息に影響を与えている可能性があります。
ウチダザリガニはトンボの幼虫ヤゴを食べてしまいます。モリトンボというトンボのヤゴは石の下にいます。ウチダザリガニと生息環境が重なっているのです。
ウチダザリガニは水草もエサとしていますが、イトトンボは水草に卵を産み付けるので、水草がなくなると産卵場所がなくなってしまいます。
さらに、ヤゴのエサとなる水生昆虫も食べてしまいます。
この3つの理由から然別湖のトンボは減っている原因としてウチダザリガニが関係してい可能性があります。
モリトンボはとても貴重なトンボで、日本では大雪山、知床、然別湖の3カ所でしか見つかっていません。生息地のひとつ、知床の先端にある羅臼湖は然別湖に雰囲気が似ていますが、然別湖の方がやや森林が発達しているように思います。
モリトンボは然別湖では20年前に発見されました。昨年、学生たちを連れてモリトンボの幼虫がどこにいるか調査しました。モリトンボの幼虫は足が長くてクモのような形をしています。生息場所が減っており、調査は船を使わなければ行けないホテルの対岸で行いました。
対岸は大きな石がゴロゴロとあるような環境で、幼虫はその石の下にいることが多いです。網ではとれないので、人海戦術で石を一つひとつひっくり返して探します。なかなかヤゴを見つけることができなかったのですが、何カ所か調査してやっと見つけました。
モリトンボは然別湖では岸部で産卵や羽化します。産卵は夕方に、羽化は夜に1~2時間程度の時間をかけて行います。産卵行動はユニークです。尾端を水にちょっとつけてしっぽの先端に水をためてから岸部にぼんと卵をはね飛ばします。
季節になると羽化殻が湖全体の岸部にたくさんありました。しかし、近年の調査では湖の北側の限られた場所にしかありません。ウチダザリガニに食べられた可能性が高く、今年はどのくらい羽化殻が減っているか、具体的に調査する予定です。
然別湖にはルリイトトンボやエゾイトトンボなどイトトンボの仲間も生息しています。イトトンボは水草の水面に出ている部分に産卵します。水面に出るには、たくさん生えていなければなりません。イトトンボは1年で一生を終えるので、ある年に水草が少なかったら、数が激減してしまうのです。
オオトラフトンボは20年前には然別湖にたくさんいました。このトンボも産卵行動が特殊で、しっぽの先端に卵をためて水草にちょんと落とします。水草がないと卵を落とすことができないので、数が減ってしまいます。
アカメイトトンボは環境省のレッドリストの中でもランクが高く、絶滅の危機に瀕しています。北海道で見られる場所は道北と池田町の2カ所だけです。アカメイトトンボが産卵する水草はかつては然別湖にもたくさん茂っていたので、もしかしたらいたけれど気づかれずに絶滅したかもしれません。
このように、ウチダザリガニの数が爆発的に増えたことがさまざまなトンボに影響を与える可能性があります。今年は然別湖で学生たちと調査を進め、データを蓄積していきたいと思います。
私が調査しているトンボの情報はブログで公開しているので、ぜひご覧ください。
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