活動報告
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全道ザリガニサミット in 円山動物園
2008年、円山動物園は基本計画を策定しました。その中に野生動物復元プロジェクトがあり、ニホンザリガニ・プログラムも含まれています。
動物園の敷地内を流れる円山川には、昔はたくさんのニホンザリガニがすんでいました。でも今は水質が悪化したことや三面をコンクリートで護岸されているため、ニホンザリガニはいなくなりました。何本かある支流の上流にわずかに残っているだけです。
ニホンザリガニ・プログラムの舞台となるのは「円山動物園の森」です。普段は非公開のエリアで、円山の原生林と隣接した自然度の高いエリアです。プロジェクトがスタートする前はバックヤードとして資材置き場などに活用してきたため、一部では外来植物も増えています。ここを市民参加で整備し、50年前の札幌の原風景を取り戻すことを目標に、動植物の管理を行っています。
「円山動物園の森」には円山川が流れていますが、先ほどお話したように今はニホンザリガニがすめる環境ではありません。上流の支流からのきれいな水を引いた流水ビオトープと雨水をためた止水ビオトープを造成しました。流水ビオトープは元々円山川が蛇行していたところで、湧水もあった場所です。
流水ビオトープ
繁殖用水槽
交尾
2009年3月にはプロジェクトの一貫として「円山動物園の森」の中にニホンザリガニ飼育施設「ザリガニ小屋」を建てました。ここでニホンザリガニの飼育・繁殖技術を確立し、将来は流水ビオトープへ放流したいと考えています。
流水ビオトープは一年を通してニホンザリガニの生息に適した水温であることを確認しています。さらに、ニホンザリガニが生息していた場所の砂を採取し、消毒してすきこんでいます。
円山川の上流から流水ビオトープに水を引き入れる場所には流れてくる落ち葉などをトラップする網が仕掛けられています。雨が大量降った後など、時々上流から流されてきたニホンザリガニがこの網に引っかかります。網がなければ汚れた円山川に入って死んでしまうし、そのままにしておいてもカラスに食われてしまう運命です。このニホンザリガニを採取して飼育しています。
円山川産の個体は、残念ながらメスがまだ小さくて性成熟に達していません。そこで、繁殖技術の確立するために、ほかの川から採取した個体も飼育しています。
飼育は冷却装置で温度管理を行い、自然の状態に近い水温にしています。春から夏にかけて水温を上げていき、夏の最高水温は15度くらいです。その後少しずつ下げ、最終的には5度まで下げます。11月~1月くらいにかけて交尾させます。水は循環させて濾過しています。エサは落ち葉や、たまにミミズを与えます。
過去に数回、交尾に成功しています。メスの腹に白い精子の塊が付着しているのを確認しています。しかし、産卵には至りませんでした。水温が少し高かったのかもしれません。ニホンザリガニの飼育においては、温度管理が非常に難しいと実感しています、
円山動物園はニホンザリガニに関する情報発信をするために、2007年から年2回くらいのペースで「ザリガニと身近な水辺を考える会」と共催のイベントを行っています。ニホンザリガニ・プログラムを市民の皆さんに知っていただき、ニホンザリガニの保全に関する啓発を行うとともに、ウチダザリガニやアメリカザリガニを通して外来生物の問題を伝えています。動物園と市民団体がコラボレーションすることにで、より多くの方々に、楽しく情報発信したいと思います。
今後は繁殖技術を確立し、円山川産の個体を使って繁殖を成功させたいと思います。そして、流水ビオトープがニホンザリガニの生息に適した環境であるかを確認した上で放流し、市民の皆さんがニホンザリガニを採取できる川を取り戻したいと思います。
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