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全道ザリガニサミット in 円山動物園

水口 拓真

ふるさとにザリガニがいる
~標津町・北の川探検隊 川と子どもの物語~

北の川探検隊

水口 拓真

標津町で「北の川探検隊」を主宰しています。「僕らが生まれたふるさとのことを、僕らはどれくらい知っているのだろう」という理念のもと、川を通して自然と子どもをつなぐ活動をしています。

標津町はサケの町として有名です。世界遺産・知床の基部にあり、基幹産業は漁業と酪農です。特にサケ・マス漁は日本で1、2を争う漁獲量です。サーモン科学館があり、サーモンフィッシングで有名な忠類川もあります。ほかにも自然度の高い河川がたくさんあります。

川にはオショロコマ、サクラマスなどの魚類やニホンザリガニが生息し、周囲の森にはヒグマ、キタキツネ、オオワシやオジロワシなどさまざまな動物がすんでいます。恵まれた自然環境のもと、ふるさとの川を感じ、川遊びの文化を作りたいと考えています。

「北の川探検隊」は2004年に設立し、今年で9年目になります。延べ80人の参加者がいます。この地に生きる子どもたちにたくさんの感動を与えたいし、見せたい風景があります。川を通して見えてくる地域の自然があります。その季節、その場所だからこその遊びを子どもたちに体験させたい、子どもたちが自分の言葉で地域の自然を語れるようになってほしいと願っています。

ヤマメやオショロコマの群泳や産卵は季節限定で見られる行動です。特に秋、9~11月は生き物が賑わう季節で、いろいろな行動が観察できます。その中でニホンザリガニは通年を通して観察でき、しかも手にとって観察できるのが魅力です。

私たちは10年かけて11のフィールドを開拓しました。各フィールドは川のタイプが異なり、生息する生き物も違います。

体験できる遊びは、釣り、水中覗き見たも網漁、そ上観察、集団追い込み式たも網漁、群泳水中観察、ニホンザリガニ採集などさまざまです。釣りには待つ楽しさ、予想する楽しさがあり、追い込み式たも網漁は一網打尽なのでいろいろな魚が入っている楽しさがあります。冬には子どもたちが「ワシのなる木」と名づけた、たくさんのオオワシがとまる木があります。

こうした体験を通して、子どもたちはどこにどんな魚がいるかを知り、どのくらいとれているかを予想してわくわくし、どうやったらとれるかを工夫します。子どもたちが考え出した遊びもあります。箱めがねで水中をのぞきながら、網を使って魚をすくいとる遊びで、熱中して取り組んでいました。逃げるものを目視してとる楽しさがあるようです。

滝壺で泳ぐと、目の前を大きなオショロコマやサクラマスがヒュンヒュンと泳ぎ去っていきます。天然の水族館です。

とった魚を食べることもあります。「命をいただく」ことを知ってもらいたいと思い、とった魚は無駄にせず自分の体に取り込みます。

ニホンザリガニを捕獲できる河川は3本あります。ザリガニには探す楽しさ、手にとれる楽しさがあり、子どもたちにとても人気のある生き物です。子どもたちへのアンケートで「とても楽しい川」と評価された川は、ニホンザリガニが生息する川でした。その中には魚をとるのが難しい川もありますが、それでも「ニホンザリガニがたくさんとれて楽しかった」から人気が高いのです。

中には高密度でニホンザリガニが生息する川があり、大きなザリガニもいます。つかまえた時、子どもたちはとてもいい表情をします。保護者も一緒に参加しますが、ザリガニとりには大人も夢中になります。

標津の子どもたちにとっては、ふるさとの風景としてニホンザリガニがいます。10年間、その数は安定しています。子どもたちはニホンザリガニを見たことがあっても、ウチダザリガニやアメリカザリガニは見たことがないという子がほとんどです。

ニホンザリガニは森と川のつながりを学ぶための優れた教材です。ザリガニのいる川には落ち葉を落とす豊かな広葉樹の森があり、スギゴケが生えて大水が出ても川床が安定しています。

こうした子どもの時の体験が大人になっても心に残ります。ちょっと落ち込んだ時や悩んだ時に思い出して、新たな気持ちで前に進む力になってくれたら嬉しいと思っています。

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