活動報告
2024年 - 第5回ニホンザリガニ円山会議を開催しました
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6月9日、札幌市円山動物園で「第5回ニホンザリガニ円山会議」を開催しました。
今年も恒例の「ニホンザリガニ円山会議」を円山動物園にて開催しました。午前は楽しく学べる体験型のイベント。札幌市内で確認されているニホンザリガニ、ウチダザリガニ、アメリカザリガニの生息地を伝えながらペーパークラフトのザリガニ釣りができる体験コーナーでは、北海道教育大学の学生さんたちがボランティアで大活躍してくれました。ザリガニすごろくや塗り絵、3Dプリンターの立体模型への色付け体験など、小さなお子さんにも楽しんでいただけるコーナーもにぎわっていました。常設展示しているニホンザリガニの他、この日は特別に円山動物園生まれの3歳のニホンザリガニも展示し、標本と合わせてじっくり観察する姿が見られました。
午後は講演会。
「釧路湿原の水辺の現状について」(NPO法人環境把握推進ネットワーク理事長 照井滋晴氏)では、タンチョウをはじめ絶滅危惧種のキタサンショウウオなど希少な生物が多数生息する釧路湿原で現在太陽光発電が激増していることが報告されました。中規模以下のメガソーラーの建設には環境アセスメントは不要であり、知らないうちに生息地がなくなってしまった、というのが実態です。再生可能エネルギーは必要なものですが、これからはアセスメントの必要性や建設適地の選定など対策が必要です。何よりも、私たちが水辺の生き物に関心を持っていくことが大切です。照井氏は自治体と協力した条例作りやトラストなどにも取り組んでいきたいと語っていました。
「2023年度の札幌市内におけるウチダザリガニ採捕調査結果について」(円山動物園客員研究員、ザリガニと身近な水辺を考える会 会長 田中一典)では、札幌市の豊平川やその支流で確認されている特定外来生物ウチダザリガニの昨年度の採捕調査について報告されました。ウチダザリガニは、豊平川で急激に生息域を広げています。特に、サケの産卵床の近くや、上流にニホンザリガニが生息する地点の近くまで迫っていることは、今後の影響が懸念されます。外来種の問題は「知らない」ことによって引き起こされることが多く、「飼わない」、「放さない(捨てない)」、「広めない」、そして「どんなペットも飼ったら最後まで」と、田中氏は訴えました。
「札幌近郊に生息するニホンザリガニの生息数の遷移について」(北海道大学大学院環境科学院生物圏科学専攻動物生態学コース 賈煒(カイ)氏)では、過去に確認されたニホンザリガニの生息地の後追い調査をしたところ、いくつかの生息地が失われていることが報告されました。中国からの留学生である賈煒氏が日本の固有種であるニホンザリガニに興味を持ち、その保全の必要性を訴えてくれたとは、感慨深いものでした。
「円山動物園での取り組みの現状・今後の展望について」(札幌市円山動物園 動物専門員 片岡雅人氏)では、動物園で取り組んでいるニホンザリガニプログラムの進捗状況が伝えられました。これまで円山生まれのニホンザリガニの飼育・繁殖に成功し、今年は新たにビオトープの整備を進め、その環境調査を進めながら試験的な放流まで行っていきたいとのこと。近い将来、動物園の森のビオトープでニホンザリガニ観察会が行える日も夢ではないかもしれません。
(事務局 野谷悦子)